AI で作ったアプリの権利は、2つに分けて確認します。1つは、使った AI ツールの利用規約が、出力の権利をどう扱っているか。もう1つは、著作権法上、著作物として保護されるかどうかです。後者は、文化庁の資料でも個別の事例ごとに判断されるとされています。この記事は法律の説明ではなく、開発会社に試作を渡す前に整理しておくことをまとめたものです。最終的には、弁護士など専門家に確認してください。
この記事が扱うこと、扱わないこと
私たちは法律の専門家ではありません。ここに書くのは、文化庁の資料と、AI ツールの公式の利用規約に書かれていること(2026年10月に原文で確認できた範囲)と、私たちが開発会社として「渡される側」で整理してほしいと考えること、です。
「この場合は著作権がある」「この場合は侵害になる」という断定は、しません。
公的資料が言っていること
文化庁(文化審議会著作権分科会法制度小委員会)は、2024年3月15日に「AI と著作権に関する考え方について」をまとめています(文化庁のページ(新しいタブで開きます))。この文書は、冒頭で「本考え方自体が法的な拘束力を有するものではなく」と断っています。そのうえで、AI で作ったものの権利に関わる部分を、3つ紹介します。
1. AI 生成物が著作物かは、個別に判断される。 同資料は、AI は法的な人格を持たないため、AI が著作者になることはなく、著作物と判断された場合は、AI を利用して創作した人が著作者になる、と整理しています。そのうえで、AI への指示が「表現に至らないアイデアにとどまるような場合には、当該 AI 生成物に著作物性は認められないと考えられる」としています。
2. 著作物かどうかを見る要素として、人の関わり方が挙げられている。 同資料は、判断の要素に、次のようなものがあるとしています。
- 指示・入力の分量と内容。創作的表現を具体的に示す詳細な指示は、創作的寄与があると評価される可能性を高める。長い指示でも、アイデアにとどまるものは影響しない
- 試行回数。回数そのものは影響しないが、生成物を確認して指示を直しながら繰り返す場合は、著作物性が認められることも考えられる
- 複数の生成物からの選択。選択だけでは影響しない
- 人が、創作的表現といえる加筆・修正を加えた部分は、通常、著作物性が認められると考えられる
3. 既存のものに似ていれば、AI を使っても侵害になりうる。 同資料は、AI の生成物についても、既存の著作物との「類似性」と「依拠性」が認められれば、著作権者が差止めや損害賠償を請求しうるとしています。また、AI 利用者が既存の著作物を認識していて、AI を使ってその創作的表現を持つものを生成させた場合は、依拠性が認められ、利用者による著作権侵害が成立すると考えられる、としています。
この資料は、画像や文章を含む AI 生成物全般についての整理です。私たちが確認した範囲では、プログラムのコードだけを取り上げた説明は見当たりませんでした。コードにどう当てはまるかは、専門家に確認してください。
AI ツールの利用規約が言っていること
利用規約は、ツールの提供者が「出力」の権利をどう扱うかを定めています。私たちが原文を確認できたものを、3つ挙げます。
| ツール | 規約の記述(原文の一部) |
|---|---|
| Anthropic(事業向け。Commercial Terms、2025年6月17日施行) | 「Customer (a) retains all rights to its Inputs, and (b) owns its Outputs.」(訳: 顧客は、(a) 入力に関するすべての権利を保持し、(b) 出力を所有する。) |
| Anthropic(個人向け。Consumer Terms、2025年10月8日施行) | 「Subject to your compliance with our Terms, we assign to you all of our right, title, and interest—if any—in Outputs.」(訳: 利用者が当社の規約を遵守することを条件に、当社は、出力に関して当社が有する権利、権原、利益のすべて(もしあれば)を利用者に譲渡する。) |
| Google(Gemini API。2026年3月23日施行) | 「Google won't claim ownership over that content.」(訳: Google は、そのコンテンツの所有権を主張しない。)。続けて、Google が他の人に同じ、または似た内容を生成することがあること、生成された内容の利用とその共有先での利用についての責任は利用者にあること、が書かれている |
ここから分かることは3つです。
- 契約の種類によって、書き方が違う。 同じ提供者でも、個人向けと事業向けで規約が別です。使っているのがどちらかを、確認しておく必要があります。
- 規約と著作権は、別々に確かめる。 規約に「あなたのもの」と書かれていても、著作物として保護されるかは、前の章の文化庁の資料のとおり、個別に判断されます。迷ったら、専門家に確認してください。
- 規約は変わる。 施行日が付いているのは、そのためです。確認した日付を、メモに残しておいてください。
OpenAI など、ほかのツールの規約は、今回は原文を取得できなかったため、この記事では扱いません。使ったツールの最新の規約を、ご自身で確認してください。
開発会社に渡す前に、整理しておくこと
ここからが、私たちが「試作を渡される側」として、整理しておいてもらえると助かると考えることです。難しい判断は要りません。事実を、箇条書きにしてください。
| 整理すること | 具体的には |
|---|---|
| 1. どのツールで、どの契約で作ったか | ツール名。個人向けか事業向けか(API を含む)。プラン。規約を確認した日付 |
| 2. 使った外部のライブラリ・素材 | 使っているライブラリの一覧とライセンス。画像・フォント・アイコン・文章・データの出どころ |
| 3. 既存のものに似せていないか | 他社のアプリや画面、他人のコードを見せて「これと同じように」と指示していないか |
1. どのツールで、どの契約で作ったか。 上の表のとおり、規約は契約の種類やツールで変わります。「Claude で作った」だけでなく、どの契約で使っていたかが分かると、あとで確認がしやすくなります。
2. 使った外部のライブラリ・素材。 AI が書いたコードには、外部のライブラリ(部品)が使われていることがあります。ライブラリには、それぞれ利用条件(ライセンス)があります。たとえば、GitHub の公式ドキュメントは、公開されているコードにライセンスが付いていない場合は、「著作権法が既定で適用され、作者がすべての権利を保持し、他の人は複製・配布・派生物の作成ができない」と説明しています。公開されているからといって、自由に使えるとは限りません。
ライブラリの一覧は、多くの場合、プロジェクトの設定ファイルにあります。分からなければ、AI に「使っているライブラリと、そのライセンスを一覧にして」と頼めます。ただし、AI の答えは報告です。重要なものは、ライブラリの公式のページで確かめてください。
画像・フォント・アイコンも、同じです。AI が生成したものか、素材サイトから取ったものかで、確認する先が違います。
3. 既存のものに似せていないか。 文化庁の資料は、利用者が既存の著作物を認識していて、AI で生成させた場合を、依拠性が認められる例として挙げています。他社のサービスの画面を見せて「これと同じ画面を作って」と指示した、といった経緯がないかを、思い出せる範囲で書き出しておきます。
もう1つ、残しておくとよいもの
文化庁の資料は、著作物性を見る要素に、指示の内容や、生成物を確認して直しながら繰り返した過程を挙げています。人がどう関わったかの記録は、あとから説明するときの材料になる可能性があります。指示のやり取りや、手で直した箇所の記録を、消さずに残してください。これは、記録を残すと判断に役立つという私たちの整理で、法的な効果を約束するものではありません。
権利の扱いは、契約で確認してください
開発会社に試作を渡し、本番化の作業を依頼する場合、渡した試作や、できあがった成果物の権利をどう扱うかは、開発会社との契約で決まります。依頼する前に、契約の内容を書面で確認してください。不安があれば、弁護士など専門家にご相談ください。
wizgeek にできること
試作を本番化するために何が足りないかの整理は、私たちがお手伝いできます。試作の構成と機能を把握し、認証・データベース・インフラ・セキュリティ・監視のうち何が足りないかを整理して、構成案をお渡しします(本番化の診断:5万円〜、税別)。構成案をもとに、お客様側で実装していただくこともできます。本番化の作業は別途お見積りします。
依頼する前の整理は、本番化を依頼する前に整理しておくことにもまとめています。まずは、AIで作ったアプリの本番化のご相談からお問い合わせください。