作った本人しか直せないアプリは、引き継げる形にできます。出発点は、アプリの構成を一枚に書き出して、作った本人以外に説明できる状態にすることです。書き出せない部分が、引き継ぎで最初に調べる場所になります。
「作った本人しか直せない」とは、どういう状態か
AI にアプリを作らせると、短い時間で動くものができます。作った本人は、AI との会話を通して、どんな構成か、なんとなく把握しています。
ところが、その把握は、本人の頭の中と、AI との会話履歴にしかないことがあります。本人が忙しくなる、異動する、辞める。あるいは、AI が書いたコードの一部の意味を、本人も説明できない。そうなると、アプリは動いていても、直せない、更新できない、障害が起きても誰も手を付けられない状態になります。
これは AI で作ったアプリに限った話ではありません。ただ、AI で作ったアプリは、設計の意図や判断の経緯が文書として残りにくいため、起きやすいと私たちは考えています。(この点は、私たちの見立てです。)
私たちの考え方: 引き継ぎは、辞めるときではなく、公開するときに考える
私たちはこう考えます。確かめるのは「直せる人がいるか」ではなく、いま、作った本人が不在になっても、他の人が状況を把握できるかです。
「いつか引き継ぐ」と考えていると、実際に引き継ぐ場面では、本人がもういません。だから、判断の時期は公開のときです。社外の人が使う、または個人情報や決済を扱うなら、運用する人が作った本人1人というのは、それだけでリスクになります。
確かめ方: 一枚に書き出す
次の項目を、作った本人以外が読んで分かる形で書き出してください。書き出せなかった項目が、引き継ぎで調べる場所です。
- どこで動いているか。 サーバー、クラウド、ホスティングサービスの名前と、画面から管理画面に入る方法
- 誰のアカウントで契約しているか。 ホスティング、ドメイン、データベース、外部サービスの契約者と支払いの担当。作った本人の個人アカウントになっていないか
- 何に依存しているか。 外部の API、ライブラリ、決済や認証のサービス。使っている API キーはどこに保管されているか
- ソースコードはどこにあるか。 誰がアクセスできるか
- どう公開(更新)しているか。 手順が書かれているか。本人しかできない操作はないか
- データはどこにあり、バックアップはあるか。 戻し方は書かれているか
- 何かあったとき、誰に連絡するか。
作った本人が AI に「このアプリの構成を、他の人が引き継げるように文書にまとめて」と頼む方法もあります。ただし、AI がまとめた文書が実際の構成と合っているかは、人が確かめる必要があります。
事例: 前任の開発会社から、コードごと引き継ぐ
私たちは、eスポーツのゲームを使った英会話のオンラインレッスンサービスを、前任の開発会社から引き継ぎました。AI で作ったものではなく、他社が作ったシステムの事例です。
きっかけは、保守費が合わなくなったことでした。まず現状を調査し、コードをリポジトリごと引き取って、保守運用から始めました。現在は、決済プランの追加、データ出力 API、パスワード再設定時のセキュリティ強化、データベースの更新など、機能追加まで対応しています。
この事例が示すのは、作った人が変わっても、現状を調べ、保守運用から始めれば、システムは続けていけるということです。そしてそのとき最初にやるのは、上の「一枚に書き出す」ことと同じ、構成と持ち主の把握です。
私たちの経験
私たちは、構成を誰も説明できず、作った本人しか直せない状態を見たことがあります。そのときの難しさは、コードを読むことより、「どこで動いていて、誰が契約していて、何が止まると何が止まるか」を探し当てることにあると感じています。
公開前に確かめる4点(秘密情報・権限・復旧・保守)の全体像は、AIで作ったアプリを本番化するにはにまとめています。この記事は、その4点目を詳しく説明したものです。
wizgeek にできること
作った本人しか直せない、資料がない、前任の担当者と連絡が取れない。そうした状態でもご相談ください。
- AI で作ったアプリの場合: 本番化の診断(5万円〜、税別)から始めます。試作の構成と機能を把握し、認証・データベース・インフラ・セキュリティ・監視のうち何が足りないかを整理して、構成案をお渡しします。構成を作った本人以外に説明できるかも、確かめる点の一つです。
- 他社が作ったシステムの場合: 引き継ぎ・現状調査(30万円〜、税別)から始めます。ソースコードと構成を調査し、アカウント・環境を引き継ぎ、課題と対応案を報告書にまとめます。
どちらも、修正や移行が必要な場合は、その結果をもとにお見積りします。引き継いだ後の保守運用は、月10万円〜(税別)が目安です。